キミ・ライコネンの不調を斬る!
- 2014/05/07
- 19:30
そんな中、序盤のフライアウェイ4戦を終えて、我らがキミ・ライコネンは表彰台もなく、入賞がやっとという奮わない成績だが、中でも直接の比較対照となるチームメイトのアロンソには完膚なきままにやられてしまっている。
アロンソは現役最高のドライバーと評されるだけあって、凄まじい結果を持ち帰ってくる希有な存在。そんなチームメイトを持つことをに果敢に挑んだ(もしくは全く他人に興味はない…(笑))キミだからこそ、何としてもこの最強のチームメイトを打ち負かしてほしいと思うのだ。
いったいどうしたのかキミ……。世界中のライコネンファンは、僕と同じくヤキモキするばかりなのだが、ここでライコネンの不調の原因をぶった斬ってみたい。
まずは開幕からここまでのライコネンの成績をみてみよう、
1オーストラリアGP:予選11位 決勝7位
2マレーシアGP:予選6位 決勝12位
3バーレーンGP:予選5位 決勝10位
4中国GP:予選11位 決勝8位
予選は最高位が5位、決勝では7位と昨年までの予選よりも決勝で結果を残してきたキミからすると、意外な感がある。もちろんマグヌッセンに追突されてしまったり、セーフティーカーの入るタイミングで運に見放されたりと、どうしようもないこともあるとはいえ、とてもフェラーリが期待していた結果を持ち帰っているとは言えないだろう。
一方のアロンソ。
1オーストラリアGP:予選5位 決勝4位
2マレーシアGP:予選4位 決勝4位
3バーレーンGP予選9位 決勝9位
4中国GP:予選5位 決勝3位
予選は最高位が4位、決勝は3位で今年の戦闘力が劣るフェラーリで見事に表彰台を獲得してみせた。
スタートでの旨さ、レース組み立ての勘所を知り尽くしたドライビング、やはり並のドライバーではない。
二人の結果を並べてみよう。
1オーストラリアGP予選:キミ11位 アロ5位
1オーストラリアGP決勝:キミ7位 アロ4位
2マレーシアGP予選:キミ6位 アロ4位
2マレーシアGP決勝:キミ12位 アロ4位
3バーレーンGP予選:キミ5位 アロ10位
3バーレーンGP決勝:キミ10位 アロ9位
4中国GP予選:キミ11位 アロ5位
4中国GP決勝:キミ8位 アロ3位
こうして比較すると、キミがアロンソを上回ったのは僅かに1度だけ、バーレーンGP予選のみ。しかし折角のその順位も決勝では逆転されてしまっている。予選だけに目を向けても、キミはすでに3度のQ2敗退に対して、アロンソは全てQ3へと進出し、決勝での結果へと繋げていく。
ここまでの獲得ポイントも大きく開き、アロンソが41ポイントを稼ぎ、ランキング3位につけているのに対し、キミは11ポイントでランキング12位。およそ4倍ものポイント差がつくというのは、同じチームで同じマシンに乗る以上は、許容できない差のはずだ。
例えば、中国GP決勝では表彰台を獲得したアロンソに比べ、キミはラップ辺り平均して1秒近く遅かった。F1での1秒はとてつもなくデカイ。一体その差はどこからくるのか、その辺りに焦点を当てて考えてみたい。
中国GP決勝終了後のライコネンのコメントは以下の通りだ。
キミ・ライコネン 決勝=8位
「本当に厳しい週末だった。金曜午前中にトラブルに見舞われ、それを完全に解決することができず、今日の決勝では望んでいるような結果を出せなかった」
「スタートはうまくいき、ふたつポジションを上げたが、その後は速さがなく、フロントやリヤに十分なグリップがなかったため、それ以上順位を上げることができなかった」
「最終スティントで新品タイヤを履くと、マシンのハンドリングが向上したけれど、その後、デグラデーションが進むにつれて、また状況が悪くなっていった」
「ここで僕が直面した困難は、さまざまなファクターの組み合わせによって生じたのだと思う。僕のドライビングスタイルが気温の低さやコース特性と組み合わさってこうなったのだろう」
「今日はチーム全員の懸命な努力によって貴重なポイントを持ち帰ることができた。さらなる改善を目指して絶え間ない努力を重ねていく」
「今日のフェルナンド(・アロンソ)の結果には大きな期待を感じられるし、僕らが正しい方向に進んでいるということが証明された」
[オートスポーツweb 2014年04月21日より転載]
金曜日のトラブルでFP1を満足に走れなかった影響が最後まで響いたことは間違いがなさそうだが、それ以上にタイヤのデグラレーションにキミが苦しむことが意外なような思う。
もちろんこの時はロータスであり、エンジンもV8と現状とは違うが、それでもキミのタイヤコントロールが卓越していることの一例だろう。
では、そのタイヤコントロールをどこの段階で失ってしまったのかというと、僕は13シーズンのシルバーストン後だと思っている。物議を醸したこのGPを覚えている方も多いのだろう、次々とピレリタイヤが爆発し、その影響で第10戦ハンガリーGPよりタイヤ素材が急遽変更になったのだ。
しかもタイヤが変更になっただけでない、それに伴いサスペンションのセッティングもピレリが推奨する範囲での変更しか許容されなくなったのだ。
これ以降、キミの苦戦が始まったと僕は思っている。決勝は様々なセーフティーカーやバトルが加わるので、純粋にタイヤの熱入れ結果に結び付く予選の結果に注目してみよう。
開幕からタイヤが変更になるまでの第9戦ドイツGPまでの結果は以下の通り。
キミ :7-7- 2-9- 4- 5- 9- 9-4
グロージャン:8-11-6-11-7-13-19-8-5
予選結果はキミの完勝で、9勝0敗だ。
第10戦ハンガリGPーからアブダビGPまでの結果は以下の通り。、キミが欠場したラスト2戦を除いている。
キミ :6-8-11-13-10-9-6- 5
グロージャン:3-7-13- 3- 4- 4-17-7
ご覧の通りグロージャンに2勝6敗と多きか敗け越している。
このことからも、いかにキミが変更後のタイヤに苦しんでいるかがわかる。
2014年シーズンのタイヤは、2013年のものを進化させ、さらにターボで増すとみられているトルクに対応するために、さらに硬めに設計されているという。その辺りでキミは苦悩は未だに続いているのだ。
もちろんこれだけの要因ではなく、新しいV6ターボ・ハイブリッドバワーユニット、エアロバランス、ブレーキバイワイヤ、そして新しいエンジニアたちなどなど、様々な要因が複雑に絡み合っていることだろう。
とはいえ、フェラーリには一昨年、昨年途中まで共に戦ったジェームス・アリソンが加入している。アリソンはじめ、キミの車への要求を知っているスタッフが知恵を絞ってこの問題を解決してもらいたい。
今週末はスペインGP。キミ・ライコネンの復調を期待したい。