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「音楽がよくわからない…」を減らす

「音楽はようわからんねぇ…」


「クラシックは全然わからないんです…」


「クラシックは難しいよねえ…」


この商売をしていると、僕の演奏会にいらっしゃいませんかとお誘いすると、よくこんな答えを頂くことがあります。
多分、多くの音楽家が耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。


武満徹氏はこんな言葉を残しています。
「音楽はそもそも、わかるわからないというものではない。」


それでも多くの方から“わからない”と耳にするわけです。音楽を演奏し、その音楽を皆さんと共に分かち合いたい、楽しみたい、味わいたいと思っている僕にとっては、見過ごせない状況だと思っています。そこで今回はどうしたら“わからない”を減らすことが出来るのか、考えてみようと思います。


1.演奏の質
最も大切なことですよね。どんなジャンルにおいても共通のことで、やはり質を高め、本丸で勝負をしなければいけません。
僕が演奏している作品は、おおよそ18.19世紀のクラシック音楽と呼ばれるものから、21世紀の今を生きる作曲家のものです。古いものですと、約200年を経ても人々に愛聴されている作品で、その事実を鑑みると音楽作品の質が悪いなんてことはないわけです。
それでも僕の演奏会にご来場下さったお客さんから“わからない”を聞く……
間違いなく、僕の演奏の質に原因があると思います。

実は以前はクラシック音楽というものは、一部の愛好家にのみ受け入れられるものだと思っていました。
その思いを根本的に覆されたのは、ベルリンで浴びるように聴いた超一流の音楽家たちの演奏です。会場には色々な層のお客さんがいるんですよね、そして素晴らしい演奏というのは聴き手の知識量や経験などに関わらず、直接内面に迫ってくるものです。それこそが音楽の神髄だと思いますが、僕もその境地にいつの日か到達したいと願っています。



2.演奏会の楽しみ
クラシック音楽会が催されるようになり、長い年月を経ているわけですが、演奏会の楽しみかたはあまり変わっていません。所謂リサイタルであれば、前半45分・休憩15分・後半45分・アンコールで約二時間程度というものが一般的でしょうか。
提供時間だけでなく、演奏スタイルも舞台に出てきて一礼し弾き始め、黙ったままプログラムを消化して帰っていく……
これはこれで古き良きスタイルですが、昨今は演奏家がトークを入れることが多くなってきましたし、演奏時間も変わってきています。 ラ・フォル・ジュルネがその一例でしょう。

もっと色んな試みがあって良いんじゃないか、演奏はもちろんだけど、それ以外も色んな工夫を凝らしてご来場下さったお客さんに楽しんでもらいたい、そんなことを思っています。
一例としては、 こんなこと(携帯電話への注意) をしたこともあります……、割りと好評でした(笑)

例えば野球を思い出してみましょうか。カープファンの僕はよくMAZDAスタジアムに足を運ぶのですが、実に様々な層のお客さんがいます。
長年カープを見続けている熱血ファンのオジチャン、ピッチャーの配球が気になるオジーチャン、最近堂林にはまっているオバチャン、ルールはわからないけど皆で盛り上がるのが好きなOLさん、ユニフォームの可愛さからカープに興味をもったオネーチャン、彼女とのデートに球場を選んだオニーチャン……などなど……
実に多層的です。そして野球というスポーツの素晴らしさは、このように多層的に楽しむことができる、どんな視点からでも面白いことだと思うんです。

音楽もそんな多層的な視点から楽しむことのできるものだと思いますし、そんな風に僕の演奏会にご来場下さったお客さんが思ってくれればなあと思っています。

ピアノソナタにおける第1テーマと第2テーマの性格的表現が気になるオジーチャン、僕の演奏会にぜひ来てください!

演奏会の雰囲気を味わってみたい、バッハ……だれそれ?というオネーチャン、僕の演奏会に来てください!

ピアノを習いはじめた女の子、 僕の演奏会に来てください!保護者の方と一緒にね。

ランチのあとに暇をもて余しているオバチャン、 僕の演奏会に来てください!


様々な方々に楽しんで頂けるよう、腕を磨き工夫を凝らして皆さんをお待ちしています。


プロフィール

Noritaka ITO

Author:Noritaka ITO
伊藤憲孝(いとうのりたか)‐ピアノ

1978年生まれ。オランダ・アムステルダム、ドイツ・ベルリンで研鑽を積み、イタリアで行なわれた第18回“チタ・ディ・ヴァレンチノ”国際コンクールで第1位を受賞。日本国内主要都市をはじめ、アメリカ合衆国、ドイツ、オランダ、オーストリア、スロヴァキア、イタリア、セルビア、マレーシア、韓国など世界各国で演奏を行なっている。その演奏は、The New York Times(アメリカ合衆国)をはじめ、Die Neue Zeitschrift für Musik(ドイツ)、Rundfunk Berlin-Brandenburg(ドイツ)などで取り上げられている。スロヴァキア国立歌劇場管弦楽団をはじめ国内外のオーケストラとの共演。室内楽奏者として、NHK交響楽団、サイトウ・キネン・オーケストラ、名古屋フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、広島交響楽団、ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団、香港シンフォニエッタ、マレーシア国立交響楽団各奏者との共演など、活発に活動を行なっている。
 
録音は、国内でディスク・クラシカよりCD <Beethoven, Activated>と<ベートーヴェン/リスト:交響曲第7番他>をリリース。ヨーロッパにおいては、ベルリンのKreuzberg Recordより世界初録音の4曲を収録したTrio kuのCDアルバムがリリースされている。
また、iNos Recordsよりインターネット配信限定となる<ムソルグスキー:展覧会の絵>、<ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番>がiTunes、AmazonMP3などを通して世界111ヶ国の国と地域にリリースされている。
 
現在、福山平成大学准教授、エリザベト音楽大学大学院非常勤講師をつとめると同時に、マレーシアのSEGi College universityでのマスタークラス、トーキョーワンダーサイトでのワークショップなど、各地で後進の指導を行っている。

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