音楽録:マキシム・ヴェンゲーロフ ヴァイオリン・リサイタル
- 2014/06/07
- 21:46

雨の降りしきるなか、マキシム・ヴェンゲーロフのリサイタルを聴きに、サントリーホールへと足を伸ばしました。
今回のリサイタルは、彼のフェスティバルの一環として開催されたもので、ピアノのイタマール・ゴランとの共演です。
ヴェンゲーロフを生で聴くのは、今回が初めて。高校生の頃に、彼がアバド指揮のベルリン・フィルといれたチャイコフスキーの録音を聴きまくっていたので、生での演奏を聴けることを、心待ちにしていました。一時期、肩を壊して引退を宣言していただけに、どうなのかなあと思っていましたが、その心配は杞憂に終わりましたね。

演奏者を後ろから眺めるP席で聴きましたが、やはりサントリーホールの音響は素晴らしいですね。
僕がベルリンで教わっていたミハエル・エンドレスが、同じようなワインヤード型のベルリン・フィルハーモニーホールよりもサントリーホールの方が、数段音響がいいと言っていたことを思い出しました。
天井を眺めると、シャンデリアと共に反響盤が設置してありますが、シンプルそのもの。フィルハーモニーホールはもっと複雑な形に配置され、音を跳ね返しているんですね、こんなところからも、サントリーホールの素直な嫌みのない響きの由縁が感じられます。

プログラムは前半はガッツリとソナタを、後半は名人芸を要求される小品を並べたもので、以下のようなものでした。

前半はエルガーとプロコフィエフのソナタです。エルガーは初めて聴いた作品でしたが、少し冗長に感じちゃいました。
プロコフィエフのソナタ第1番は、僕にとって懐かしい作品。というのも、ベルリンでの室内楽の卒業試験のプログラムに入れていた作品の一つだからです。
ヴェンゲーロフは本当に見事でしたね、まるでダイヤモンドダストが舞い散るような高音から、凄みのある硬質で深い音色まで自由自在で、このプロコフィエフの躍動するソナタを聴かせてくれました。
後半は、ヴェンゲーロフ自身がマイクを持ち、「おはようございます」との日本語の挨拶で始まりました。アンコールをテーマに集めたという名曲の数々を、素晴らしい説得力を持って演奏してくれました。
なかでも白眉はパガニーニのカプリスとイザイのソナタ。この2つの無伴奏作品を、イマジネーションに満ちた音楽と、完璧な技巧で聴かせてくれました。
トークでは彼のざっくばらんな性格が垣間見えて、お客さんも喜ばれたのではないでしょうか。
とはいえ欲を言えば、トークなしで小品の数々を畳み掛けるように聞かせてもらいたいなあとも思いましたが、この辺りは好みの差でしょうか。
開演2時で終演が5時前という、3時間近くにのぼるお腹一杯の演奏会でしたが、またヴェンゲーロフを聴きたい!と思わせてくれる素晴らしい一時でした。