クラシックのピアニストが、F1を観たら良い4つの理由

1.「優雅で野蛮」欧州文化の神髄が体感できる
 クラシック音楽と欧州の文化は、切っても切り離せません。バッハに始まり、モーツァルトやベートーヴェン、ドビュッシーなどなど、クラシック音楽が中央ヨーロッパを中心に花開いた音楽であることに、異論はありませんよね。もちろん20世紀には、欧州以外からの素晴らしい作曲家も生まれています。日本にも武満徹をはじめ、西村朗や細川俊夫、新世代の酒井健治など、素晴らしい作品を発表している作曲家がいます。とはいえ、やはり音楽の文脈において、欧州文化の理解は必須といえるでしょう。
 皆さんにとって、欧州文化はどのようなものでしょうか? 歴史学、芸術史、音楽史…などなど様々な観点からその文化を見つめることができると思いますが、僕が体感している欧州は「優雅で野蛮」だということです。
「優雅で野蛮」、F1はまさにそうです。ため息が出るほど美しいマシンが、野獣のような唸り声をあげて走り回る姿は、まさに優雅で野蛮ですよね。クラシック音楽も、魅力的な作品や演奏には、「優雅で野蛮」さがあると思いませんか? 美しい音で奏でていても、美しいだけでは心に響かないですよね、時には粗野な荒々しさや、人間の負の感情なども内包できると、いい演奏に繋がると感じています。


2.「Never Give Up」諦めないことの大切さを学べる
 演奏をしていると、いつもいつも上手くいくわけではありませんよね。自分が理想としている演奏の85%ができれば、良いのではないか…僕はそのように思っているのですが、時にはさらに酷い演奏になってしまい、弾きながら落ち込んでしまうこともあります。
しかし、諦めちゃあそこで終わりなのですよ。F1は年間を通して、何回もレースがあります。、それら一つ一つのレースでは優勝したドライーバーや上位入賞したドライバーにポイントが付与され、それらの合計で年間のチャンピオンシップをかけて争い、その合計点が最も高いドライバーが世界王者となります。
長い長い闘いなのですが、最終レースの最終コーナーで、年間王者が決定することもあるんです。それもわずか1ポイント差で!なので、絶対に諦めては、いけない。最後の1つのコーナーまで、最後の1つの音まで絶対に諦めてはいけないのです。


3.「細部まで確認」神は細部に宿ることを知る
 どんなに知り尽くしたと思った作品であっても、演奏するたびに学ぶことはあるはずです。このこと、言葉で言うのは簡単ですが、実際はそれほど易しいことではありませんよね。弾きこめば弾きこむほど、作品を手の内に入れることができますが、同時に新鮮さを保つことが難しくなります。
F1も同じです。どんなに知り尽くしたと思ったサーキットですら、迷子になってしまうことがあるのですね…。神は細部に宿ると言います。いつだって、細かなことを積み重ねていくことを意識したいものです。


4.「Leave me alone!」自分自身でいることの大切さ
 クラシックのピアニストでいることは、自分だけで成り立つものではありません。多くの人たちが周囲で支えてくれるからこそ、ピアニストとして存在できるわけです。特にコロナの影響で演奏の機会を失ってからは、そのことを痛感するようになりました。とは言え、周囲のことばかりを気にしてしまい、自分を見失ってしまってはいけません。
今自分の目の前にある仕事にベストを尽くすことは、ピアニストもF1ドライバーも変わりません。良かれと思って寄せてくれる周囲の助言が、邪魔くさく感じてしまう時には、「放っておいてくれ、自分のすべきことはわかっている!」と主張し、自分自身であり続ける強さをもちたいものです。

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プロフィール

Noritaka ITO

Author:Noritaka ITO
伊藤憲孝(ピアノ)
1978年生まれ。オランダ・アムステルダム、ドイツ・ベルリンで研鑽を積み、イタリアでの18th Citta di Valentino International Competitionで第1位、アメリカでのGolden Classical Music Awards International Competition第1位を受賞。日本国内主要都市をはじめ、アメリカ合衆国、ドイツ、オランダ、オーストリア、スロヴァキア、イタリア、セルビア、マレーシア、韓国など世界各国で演奏を行なっている。ローマではメディチ荘および在ローマ日本文化会館に招聘され「酒井健治ピアノ作品全曲演奏会」を行うなど、近年は同時代の作曲家の作品に積極的に取り組み、その演奏は、The New York Times(アメリカ合衆国)をはじめ、Die Neue Zeitschrift für Musik(ドイツ)、Rundfunk Berlin-Brandenburg(ドイツ)などで取り上げられている。スロヴァキア国立歌劇場管弦楽団をはじめ国内外のオーケストラとの共演。室内楽奏者として、NHK交響楽団、サイトウ・キネン・オーケストラ、名古屋フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、広島交響楽団、ブレーメン・フィルハーモニー管弦楽団、香港シンフォニエッタ、マレーシア国立交響楽団各奏者との共演など、活発に活動を行なっている。
 録音は、国内でディスク・クラシカよりCD <Beethoven, Activated>と<ベートーヴェン/リスト:交響曲第7番他>をリリース。ヨーロッパにおいては、ベルリンのKreuzberg Recordより世界初録音の4曲を収録したTrio kuのCDアルバムがリリースされている。
また、iNos Recordsよりインターネット配信限定となる<ムソルグスキー:展覧会の絵>、<ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番>がiTunes、AmazonMP3などを通して世界111ヶ国の国と地域にリリースされている。
 現在、福山平成大学准教授、エリザベト音楽大学大学院非常勤講師をつとめると同時に、マレーシアのSEGi College universityでのマスタークラス、トーキョーワンダーサイトでのワークショップなど、各地で後進の指導を行っている。

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